使用教科書

 それぞれの学校ごとに使用する教材は違うと思いますが、これまで実績を重ねてきたマスター・ミミーからの提案を書いてみたいと思います。
 というのも、前ページで書いたとおり、日本語の教科書と一言で言っても、大きく2つの潮流があるということです。『Can-do信者』から見た『正統派』である『みんなの日本語』は、時代遅れなのでしょうか?また、『正統派』から見た『Can-do信者』たちは『邪道』なのでしょうか?
 ミミ―だけでなく、多くの方がお感じになられるとおり、それぞれ一長一短なのは言うまでもないでしょう。
 そう。
 要は、学生が何を求めるか、どのようなコースデザインをするか、によって使用する教材なんていくらでも変わってくるということです。

進学コース
 日本語学習者のニーズによって、使用する日本語の教科書は変わってきます。例えば、ミミーがずっと手がけてきた(手がけている)私費外国人留学生入試で考えるなら、『外国人入試』のページでも書いていますが、やはり『文型積み上げ型』の日本語学習が必要となってきます。というのも、外国人留学生が受験する外国人入試では、大きく4つのパターンの入試が実施されるからです。

①『作文・小論文』型入試
②『国語(現代文)試験』型入試
③『日本語能力試験』型入試
④『書類選考(日本留学試験のみ等)』型入試

 以上の4つです。
 大学の入試案内を見れば書いてありますが、一言『日本語試験』と言っても、上記の①~③のようなパターンがあります。①の『作文・小論文』型入試では、さらに細分化されるほど様々な種類があってバリエーション豊富です。②の『国語(現代文)試験』型入試に至っては、日本人受験生と変わらないような(違うのは横書きになっている等)試験が出題されます。そして、③の『日本語能力試験』型入試では、まるで日本語能力試験の問題をパクったかのような出題がされます。
 これらはいずれも文科省・法務省が指定する日本の大学・専門学校へ進学するには、日本語能力試験のN2相当の日本語力が必要』という条件をテストするために設けられている入学試験で、③の『日本語能力試験』型入試などは、その最たるものでしょう。
 そして、④の書類選考では、まず『日本留学試験』の成績の提出を求められます。『日本留学試験』では、(言いたいことは山ほどありますが一応)日本語スコア200以上がN2相当とされているため、この試験をもって、文科省・法務省の指定条件をクリアすることが条件となります。
 これらの入試をクリアするためには、やはり『Can-do型』の指導では足りず、どうしても『文型積み上げ型』学習、『文法訳出法』学習が必要となるのです。また、そのコースの目標が『日本語能力試験』合格であるなら、この『文型積み上げ型』学習はますます必須のことで、これらは『出口(入試などの最終ゴール)が変わらない限り変えられない』という日本人の大学入試(英語教育)事情そのままなのが現状です。よって、法務省告示校で『進学コース』を設けて学生募集するなら、圧倒的に『文型積み上げ型』学習の『みんなの日本語』がふさわしいと、ミミ―は考えます。

特定技能コース
 留学生30万人計画の影の部分、いわゆる偽装留学生問題が明るみに出ました。その根幹には日本社会の少子高齢化、人手不足の問題があります。それを今までは留学生のアルバイトに頼ると言った不安定な労働力確保に頼って来た綻びが、この偽装留学生問題です。
 そこで、ご存じのとおり、入管法を改正し、新しく在留資格『特定技能』を設けました。これによって単純労働に就くのも合法となり、およそ1,500,000人の人手不足のうち約345,000人を外国人労働者で補おうという政策がとられました。その結果、既に特定技能を目指す外国人が増え、入管の締め付けと同時に、留学生の数が激変し、日本語学習者たちのニーズも大きく変わってきています。
 在留資格『特定技能』を取得し、日本での就職を考えるなら、当然!『みんなの日本語』なんぞやってる場合ではありません。ここでは『Can-do型』学習の教材を使用し、とにかく口頭練習を繰り返し、日本語コミュニケーション能力をつけさせるのが最大の目的となります。
 ということは、当然、このような学習者に対しては『Can-do系』の『できる日本語』『つなぐ日本語』『まるごと日本のことばと文化』といった教材での指導が有効になってきます。

 使ったことがないから授業が出来ない?
 寝ぼけたこと言ってんじゃねぇよぉ(怒)!!!!
 あんた、日本語を教えてるのか?それとも、教科書を教えてるのか?

 …などと吠えたくなるベテランは、数限りなくいらっしゃると思います(笑)。

 ただ、私からすれば『まるごと日本のことばと文化』を推薦します!
 理由?
 だぁって、これって、そもそも外国人奴隷輸入計画…、もとい、偽装留学生…じゃなくて、特定技能で外国人から労働搾取する目的で、じゃなくて、日本の国際貢献を目指して作られた教材ですよね(笑)。
 こんな皮肉を言いたくなるのは、ミミーだけでしょうか(笑)。