餅は餅屋に
前述のやりとりが如何に虚しく響くか、このホームページを見る方々にはおわかりいただけると思います。いや、それ以前に、私の話なんぞ信じないかもしれません。けど、日本語教師から話を聞いてみましょう。二言目には『日本人の入試とは違う。』と、差別意識丸出しで鼻息を荒くしますから。
外国人の大学受験は、もちろん日本人の一般入試とは違います(一部、一般入試でも入れる大学もある)。
…そう。
日本人の特別選抜入試と同じ枠で募集するのです。
どこぞの予備校のキャッチフレーズではありませんが、かなり昔から既に大学生の2人に1人が特別選抜入試かAO入試で入学して行く時代です。
日本人の特別選抜入試の代表格、一般公募推薦入試の試験科目は?AOは?
…面接、作文・小論文。
外国人と全く同じです。
合格基準が違う?
なら外国人入試とはどのような合格基準で判定されるのか、教えてください。
皆さん、『日本語力』なんて馬鹿なことを言わないでくださいね。
実際に学生を大学へ進学させた人間には、残念ながらそのような話は通用しません。
では、日本人と同じだから何だというのでしょうか?
なぜこんなことにこだわるのでしょうか?
…そう。まず第一に、
日本人と同じだから日本留学試験は6月試験の方が重要なのです!
最近(と言っても数年前)、日本留学試験という試験が施行されました。この試験は年に2回実施される試験です。
6月と11月。
日本人と同じなら当然6月の日本留学試験の方が重要となってきます。
これは日本人の特別選抜入試と同じ予定で考えれば当然のことです。
しかも、首都圏のかなりの大学が日本人の高校生と同じ日に入試を実施し、時期も同じ、となりの教室で選考試験を行っています。
ここまでくればわかるでしょう。
その道の指導経験がある日本語教師がどれほどいるでしょうか?
圧倒的多数の日本語教師が特別選抜入試の意味など全く理解せず、『11月の留学試験を頑張りましょう!』などと言っているのではありませんか?
あまりの知識の無さに、唖然とさせられてしまいました。
私がいた日本語学校では、11月試験の結果が出るのが冬休みの期間中だから、特別に登校日を決めて進学面談をしよう!などとおっしゃる日本語教師のおばさんもいました。既に手遅れだと話し、一切、無視しましたが、その先生が担当したクラスの学生たちがかわいそうで仕方ありません。当然、私は、早い段階から説得しました。しかし、私の言葉などには一切耳を傾けず、『日本人の入試と外国人の入試は違うの!』の一点張りでとおしていらっしゃいました。
もちろん、外国人が日本の大学に入るためには日本語という大きな壁があります。それを教えるのが日本語教師の仕事です。
しかし、こと大学受験となると、日本語教師の及ぶ範囲ではありません。受験指導をするならそれ相応の研究と実力が無ければ無理で、日本語教授法とは全く関係の無い世界です。進学した学生の現実をみれば一目瞭然ですが、決して日本語が上手だから偏差値上位大学へ入れるということではありません。日本語能力など合否判定には関係ありません。不合格の“口実”にされているだけです(でなければ学生を集められない)。偏差値上位大学なら日本語なんかよりむしろ英語力です。TOEFLの成績です。
海外で言うところの進学高校を卒業した優秀な学生が相手なら日本語を教える程度で簡単に合格させることができるかもしれません。また、昔のように大学進学を希望する外国人そのものが少なく、5名募集枠に10人受けて8名が合格し最終的に入学するのが4名といったような状況なら、誰でも入れるでしょう。そんな状況では学生は放っておいても自分で進学して行きます。決して日本語教師の指導の結果ではありません。
ある日、私が日本語教師の受験への認識の甘さを指摘すると、日本語教師の方から「あなたは日本語教師を馬鹿にしている!」と怒られました。しかし、その日本語教師には「あなたこそ受験屋を馬鹿にしている。」という言葉は響かなかったようです。
外国人には特殊な授業が必要?
それはあくまでも日本語学習の話です。
悲劇
ある学生が私のところへ来て言いました。
「先生、この大学、おかしいです。11月試験でも大丈夫なのに、11月試験の結果発表前に合格発表します。」
おかしくありません。その大学は11月試験の結果でも大丈夫です。しかし、それは今年の11月試験ではなくて去年の11月試験なのです。
それを聞いて彼は 「○○先生は大丈夫だと言いました。」 と泣き出しました。
そうです。
これは嘘ではありません。
その日本語の先生は大学入試を知らないのです。
外国人の入試は日本人の入試と同じです。
日本人と同じ特別選抜入試で実施されます。
つまり、大切なのは、日本人と同じく7月に発表される成績、つまり、6月に実施される第1回日本留学試験なのです。